あのあと、美桜と心春は揃って担任から呼び出しを受けこっぴどく怒られた。どうやらすでに授業が始まっていたようで、突然の叫び声に何事かとちょっとした騒動になっていたようだ。
 大人しく叱られる美桜と心春にため息を吐きながら、担任は「まあ」と頭をかいた。

「外崎と上羽が仲良くなったみたいで安心したよ」

 その言葉に美桜と心春は顔を見合わせると「はい」と揃って返事をした。
「失礼しました」と生徒指導室を出て教室に戻ろうとしたとき、スマホが震えた。取り出してみると、敬一からのメッセージが届いていた。
 どうやら晴斗に連絡を取ってくれたようで、美桜が求めていたものを探してくれたようだった。でも、もう遅い。敦斗はもう――。
 そう思ったあと、ふと気づいた。敦斗が好きだったのは美桜だったのであれば、用意していたというプレゼントはいったい誰のものだったのだろうか。
 尋ねようと美桜が返信を打ち込もうとするけれど、それよりも早く敬一から次のメッセージが届く。

『今日、晴斗が届けに来るって。俺も久しぶりに帰るわ』

「今日?」

 戸惑いながらも「わかった」とだけ返事を送った。


 その日の放課後、美桜は心春とともに自宅へと向かっていた。心配だから、と着いてきてくれたのだ。
 自宅に着くと、もうすでに敬一と晴斗は到着していたようで玄関の鍵が開いていた。

「ただいま」
「おう」
「こんにちは。……って、あれ? 心春?」
「やっほー」

 ソファーで喋っていた晴斗は、美桜の帰宅に気づき立ち上がる。が、その後ろから現れた心春の姿に驚いたようだった。

「どうして心春がここに?」
「美桜ちゃんのことが心配だったから着いてきたの」
「知り合いか?」

 親しげに話す晴斗と心春に、敬一は不思議そうに尋ねる。晴斗は「あー」と頬を掻いたあと、照れくさそうに言った、

「彼女」
「は? お前、三つも年下に手、出してんの?」
「いいじゃん、別に。敬一だって今の彼女、五つ年上でしょ?」
「え、お兄ちゃんって彼女いるの? 五つ年上? ってか、今のってどういうこと?」
「俺の話はいいんだよ」

 思わぬところで聞いてしまった敬一の恋バナに思わず美桜は声を上げる。そんな美桜を敬一は鬱陶しそうにすると晴斗を促した。

「何かこいつに渡すものがあるんだろ」
「あ、うん。美桜ちゃん、これ」