敦斗は美桜の隣に座ると、項垂れる。美桜は何かを間違えたのだろうか。ただ敦斗のためにと、そう思っただけなのに。隣に座る敦斗は苦しそうで、そんな姿を見ると美桜の胸も苦しくなる。

「私こそ、ごめんね」
「美桜が謝ることは何もないよ」
「うん……。でも、ごめん」
「なんの「ごめん」なのさ」

 敦斗は顔を上げると小さく笑う。その笑みに、美桜は少しだけ安心した。
 ふと視線を上げると、ジェットコースターが勢いよく下っていくのが見える。

「私、さ」
「ん?」
「多分なんだけどジェットコースター、苦手みたい」
「多分ってなに」
「乗ったことなかったから、苦手だって思わなくて」
「そっか。……じゃあ、何なら乗れそう?」

 敦斗の問いかけに、美桜は入り口でもらったパンクレットの乗り物を見比べる。ウォータースライダーがダメだった美桜が乗れるものはどれだろう。勢いよく縦回転するコーヒーカップのような乗り物はおそらく無理だし、心春達が次に乗ると言っていたフリーフォールなんて自分が乗っているところを想像しただけで胸の奥がザワザワしてくる。吊り下げ式のジェットコースターなんて論外だ。と、なると。

「観覧車、とか?」
「んじゃ、美桜の具合が落ち着いたら観覧車乗りに行こっか」
「え、でも」

 それは敦斗が心春と乗りたいと言ってたのでは。
 喉まで出かかった言葉を、美桜は飲み込んだ。

「どうした?」
「ううん、乗りに行こっか」

 敦斗の未練を晴らすためにここにいる。そうわかっているのに。それでも、敦斗と二人で観覧車に乗れることを、喜んでしまう自分がいる。
 立ち上がる美桜の隣に敦斗が並ぶと、どうしようもなく心臓の鼓動が激しくなった。
 他の生徒はジェットコースターなどの絶叫マシーンに乗っているのか、並んでいる人もおらず、美桜と敦斗はすぐに乗り込むことができた。向かい合って座ると、どこか照れくさくて美桜は窓の外に視線を向けた。
 ゴンドラは少しずつ高度を増し、先程まで立っていたはずの地面が遠くなる。思ったよりも上がっていくゴンドラに、少しだけ鼓動が早くなる、そんな美桜に気づいたのか、敦斗は気遣うように美桜を見つめた。

「怖い?」
「だ、大丈夫」