ふっと笑った心春に、そういうものなのだろうかと美桜は首をかしげる。幼なじみと言えるほど自分たちに関わりはなかったとそう思っている。けれどそうなのだと言われてしまえば否定する必要も感じない。

「もしかして、だから最近外崎さんと一緒にいたの?」

 後ろの席から、美咲の悲痛な声が聞こえてくる。振り返ると、口元に手を当てて泣きそうな顔をしているのが見えた。

「細村の思い出を二人で共有するため……? わ、私、そうとも知らずに心春のこと外崎さんに取られたみたいに思って……それで……ごめんなさい!」

 この事態に美桜はついて行けていないけれど、心春は「気にしないで」なんて言って目元を拭っている。いつの間にか、先程の美桜のうっかりは死んでしまった幼なじみの敦斗を想うどこか美談な形に纏められてしまった。そんなんじゃないと否定したい。美談でもなんでもないんだと、そう言いたいけれど隣に座った心春が美桜の腕を掴んで首を振った。

「いいから」
「でも!」
「ほら、見て」

 心春の言葉に辺りを見ると、もうみんな先程までの話題を忘れ違うことで盛り上がっていた。蜂矢たちは敦斗が生きていた頃のことを面白おかしく話し、美咲たちはいつの間にか恋バナに話が移ったようだ。たしかに、今余計なことを言えばやぶ蛇になりかねない。美桜は頷くと、大人しく座り直した。
 そしてチラリと心春の方を見る。

「なに?」
「え、えっと」
「幼なじみってこと、知ってたんだ、って?」
「……うん」

 まさか心春が知っていたとは思わなかった。けれど、よく考えれば二人は仲がよかったし敦斗は心春のことが好きなのだ。何かの拍子で小中学校の話になってそのときに美桜も一緒だったと話していても不思議ではない。

「敦斗がね、美桜ちゃん――あ、そう呼んでもいい? 外崎さんって言いにくくて」
「あ、うん」
「ありがと。美桜ちゃんのこと話してたの。色々あって気まずくなっちゃったことも」
「そう、なんだ」

 心春とは中学が違うからまだ出逢って一ヶ月ほどしか経っていなかったはずだ。なのに、そこまで話すほど仲がよかったのか、と胸の辺りが重くなる。そんな美桜の気持ち気づいたのか心春は「私たちね」と口を開いた。

「実は高校入学前から知ってるの」
「そうなの?」