「だって、下がらなかったら……遠足に……」
「遠足なんてどうでもいいから!」
「よくないよ!」
声を荒らげる美桜に敦斗は驚いたような表情を浮かべる。美桜はどんどん熱が上がり、目が、そして吐く息が熱くなっているのを感じる。でも、だからこそ薬を飲まなければいけないのだ。少しでも早く治さなくては。
「私が……敦斗にできることなんて、それぐらい……なん、だから」
「美桜……」
「だから……」
「やめろよ!」
美桜の手を掴もうとして、敦斗の手がすり抜けた。
「くそっ……!」
「敦斗……?」
「頼むから……そんなことしないで……」
何度も何度も美桜の手をすり抜けながらも敦斗は必死に止めようとする。そんな敦斗の行動に気づけば美桜の瞳からは涙が溢れていく。どうして泣いているのか自分でもよくわからない。ただただ悲しくて、そして辛かった。
「ごめ……ん……」
「くそっ……くそっ……」
「ごめん……もう、しないから……だから……」
その手を握りしめられないことが、こんなにも辛いなんて思わなかった。溢れる涙を止められないまま敦斗を見ると、敦斗の頬にも涙が流れていた。
薬を飲むのをやめて美桜は自分の部屋に戻る。途中、敦斗が「ひんやりシートとかあるなら貼った方がいいよ」と言うので冷蔵庫に冷やしてあったそれを額に貼った。ベッドに寝ると、敦斗はすぐそばに座り込む。
「ちゃんと休むから大丈夫だよ」
「心配だからここにいる」
「でも」
「ダメ」
何を言っても引かない気がして、美桜は諦めると目を閉じた。いつの間に降り出したのか、窓の外からは雨音が聞こえる。雨のせいで外の音がかき消され、まるでこの世界に二人だけになってしまったみたいに思える。真っ暗な部屋で雨音と敦斗の声だけが美桜の耳に届く。
「雨……?」
「うん。結構降ってる」
「遠足……どう、なるんだろう」
「雨天順延って言ってたからこのまま降り続いたら中止かな」
敦斗の言葉に少しだけ安心する。手探りで枕元に置いたスマホを探し天気予報を表示させると、明日明後日ともに大雨と書かれていた。その画面を敦斗に見せると、少しだけ表情を和らげた。そして敦斗は美桜に向き直ると、真剣な表情で言った。
「俺のために、無理しないで」
「遠足なんてどうでもいいから!」
「よくないよ!」
声を荒らげる美桜に敦斗は驚いたような表情を浮かべる。美桜はどんどん熱が上がり、目が、そして吐く息が熱くなっているのを感じる。でも、だからこそ薬を飲まなければいけないのだ。少しでも早く治さなくては。
「私が……敦斗にできることなんて、それぐらい……なん、だから」
「美桜……」
「だから……」
「やめろよ!」
美桜の手を掴もうとして、敦斗の手がすり抜けた。
「くそっ……!」
「敦斗……?」
「頼むから……そんなことしないで……」
何度も何度も美桜の手をすり抜けながらも敦斗は必死に止めようとする。そんな敦斗の行動に気づけば美桜の瞳からは涙が溢れていく。どうして泣いているのか自分でもよくわからない。ただただ悲しくて、そして辛かった。
「ごめ……ん……」
「くそっ……くそっ……」
「ごめん……もう、しないから……だから……」
その手を握りしめられないことが、こんなにも辛いなんて思わなかった。溢れる涙を止められないまま敦斗を見ると、敦斗の頬にも涙が流れていた。
薬を飲むのをやめて美桜は自分の部屋に戻る。途中、敦斗が「ひんやりシートとかあるなら貼った方がいいよ」と言うので冷蔵庫に冷やしてあったそれを額に貼った。ベッドに寝ると、敦斗はすぐそばに座り込む。
「ちゃんと休むから大丈夫だよ」
「心配だからここにいる」
「でも」
「ダメ」
何を言っても引かない気がして、美桜は諦めると目を閉じた。いつの間に降り出したのか、窓の外からは雨音が聞こえる。雨のせいで外の音がかき消され、まるでこの世界に二人だけになってしまったみたいに思える。真っ暗な部屋で雨音と敦斗の声だけが美桜の耳に届く。
「雨……?」
「うん。結構降ってる」
「遠足……どう、なるんだろう」
「雨天順延って言ってたからこのまま降り続いたら中止かな」
敦斗の言葉に少しだけ安心する。手探りで枕元に置いたスマホを探し天気予報を表示させると、明日明後日ともに大雨と書かれていた。その画面を敦斗に見せると、少しだけ表情を和らげた。そして敦斗は美桜に向き直ると、真剣な表情で言った。
「俺のために、無理しないで」