「……寂しいなって」
 
 美桜は自分が尋ねたことがどれだけ残酷なことだったか、辛そうに言う敦斗の表情を見て初めて気づいた。
 寂しくないわけがない。たった数日前までこの教室には当たり前のように敦斗がいて、敦斗の居場所があった。友達と笑い合い、バカやって暮らすのムードメーカーだった。
 なのに、今この教室に敦斗はいないことにされている。美桜以外の誰にも見えない敦斗のことを、みんなが忘れたわけじゃない。それでもみんな敦斗のいない日々を当たり前のように生きている。これが寂しくないわけがない。辛く、悲しいわけがない。

「私に、何かできること、あるかな」
「……楽しんで」

 その一言は、美桜にとって思い一言だった。

「俺の分まで、楽しんで」

 わかった、と言い切る自信は美桜にはない。だから。

「頑張る」

 それが美桜に言える最大限の言葉だった。けれど敦斗はそんな美桜の言葉に嬉しそうに微笑んだ。