指さす方を見ると、美桜と同じように余ってしまっている橋本という男子の姿があった。おそらくどこかの男子グループが五人になっているはずだが、誰も誘うことなく放置されたおかげで一人だけポツンと残る形になっていた。

「俺が死んだから、一人足りないんだよな」

 舌打ちをする敦斗にそういうことかと美桜はようやく気づいた。男子の人数も女子と同じで十八人なので男女混合の班ができない限り余る人は出ない。けれど今は敦斗が亡くなったので全員で十七人だ。必然的に一組は五人の組ができる。なので今五人しかいないグループ二つはどちらかは橋本を入れ、どちらかはそのままのメンバーで問題ないことになる。その押し付け合いを今しているようだ。

「ああいうの、俺すっげー嫌いだわ」

 敦斗が苛ついているのが目に見えてわかった。そして。

「俺が死んでなければ、こんなくだらないことも起きなかったのにな」

 ポツリと呟いた敦斗の言葉に胸が痛む。美桜にできることは何かないのだろうか。

「……わかった」

 美桜が必死に考えている間に、美咲は諦めたようで心春が同じ班になることを受け入れてくれた。受け入れた、というよりは橋本と天秤にかけた結果、美桜の方がマシだと判断したようだったけれど。

「んじゃ、先生に言ってくるね」

 そう言って班のメンバーを先生に報告に行こうとする心春を美桜は呼び止めた。

「あ、あの」
「え?」
「ありがとう」
「……別に、クラスメイトだしね」

 そう言いながら心春は橋本へと一瞬視線を向けた。もしかしたら心春も敦斗と同じように橋本のことを気にしているのかも知れない。同じことを考える二人に、目には見えない結びつきがある気がして、胃の奥の辺りが重くなるのを感じる。この感覚は一体何なんだろう。

「どうしたの?」
「え、あ。えっと」

 不思議そうにする心春に、何を言えばいいのだろう。

「……もしかして橋本のこと?」
「え? ……うん」

 それだけではないけれど、でも間違っているわけではないので素直に頷いた。心春は岡野の元へ報告に行くため歩き出したので、自然と美桜もその隣を歩く。

「私も気になってるんだけどね。……敦斗がいたら、あんなことにはならなかっただろうな」
「……敦斗が」
「ん?」
「敦斗が生きていたら、なんて言ったと思う?」