心春につられるように他の女子もこちらを見た。その視線が怖くて思わず目を逸らしそうになる。けれど、そらした先にいるのは敦斗だ。美桜が敦斗にできることなんてこれぐらいなんだから、勇気を出すんだ。
 不躾な視線を感じながらも、美桜は何とか口を開いた。

「は、班に、入れて、もらえない、かな」
「え?」

「いいよ」でも「いやだ」でもなく聞き返されてしまうのが一番辛い。せっかく勇気を振り絞って言った言葉をもう一度言わなければいけないのだ。やっぱり何でもない、とこのまま回れ右して戻りたい。戻りたい、けれど……!

「わた、しも上羽さんたちの班に入れて欲しいの。ダメ、かな」

 今度こそきちんと届いたはずだ。恐る恐る顔を上げ、心春達を見る。困惑した表情の宇田や他の女子の中で、心春だけは真っ直ぐに美桜を見つめていた。そして、笑顔を浮かべた。

「いいよ」
「え、心春。なんで」
「何でってクラスメイトじゃん。それとも美咲はやだ? 反対?」
「べ、別にやだってわけじゃないけど」

 やだと大っぴらに言えないけれど歓迎はしない、そんな不満が聞こえて来そうな表情で美咲と呼ばれた女子は言う。他の子達も概ね美咲と同じ意見なのだろう。顔を見合わせて「でも……」とか「やっぱり……」とかこそこそ言い合っている。ただそんな女子の中で宇田だけは「まあいいんじゃない?」と肩をすくめて言った。

「え、なんで?」

 宇田の言葉に美咲はあからさまに嫌そうな表情を浮かべる。リーダー格である心春に対しては言えなくても宇田になら言える、というようなよくわからない序列があるようだ。けれどなんでと尋ねられた宇田はさも当たり前とでも言うように数を数え始めた。

「だって私に、心春に美咲。それから百合に静香でしょ。岡野、六人グループを組むようにって言ったんだからあと一人いるじゃん」
「それは、そうだけど」

 男女ともにが十八人ずつということもあり、岡野はあまりが出ないように六人グループにしたようだ。それでも美咲は不服そうで「でも」とか「だって」とか言っていた。そんな美咲に宇田は続ける。

「それともあそこで余ってる橋本連れてくる?」