「……昨夜、細村が事故に遭って、今朝亡くなったそうだ」
「嘘……でしょ?」
「…………」
岡野の言葉を聞いて一瞬、教室の中が無音になった。けれどすぐにざわめきが大きくなり、みんな口々に岡野に尋ねる。女子の中には泣き出してしまう子もいた。
美桜も思わず耳を塞ぎたくなった。信じたくなかった。けれどそんな自分の感情に気づき――蓋をするように頭を振った。きっと敦斗だって美桜になんて悲しんで欲しいなんて思っていないはずだ。恨まれていて当然、なのだから。そんな美桜に悲しまれたりなんかしたら、成仏できるものもできないだろう。小さく息を吐くと、何でもないふりをして顔を上げた。
「冗談、ですよね? だって、まさか……」
震える声で蜂矢がもう一度尋ねる。けれど岡野は無言で首を振った。「そんな……」と力なく声を上げ頭を抱える蜂矢の声に重なるように、しゃくり上げる心春の声が聞こえた。もしかしたら心春は敦斗の死を知っていたのかもしれない。なぜだかわからないけれどそんな気がした。
周りの女子もそんな心春に気づいたのか、背中をそっと撫でる。けれど誰も何も言えない。信じたくないのだ。
そんなクラスメイトたちを美桜はなんの感情の起伏も出さないまま見つめていた。敦斗の死に対しても可哀想だとは思うけれどそれ以上の感情はない。むしろクラスメイトが一人死んだぐらいであんなふうに泣けるものなのかと、泣き声が聞こえれば聞こえるほど心のざわつきをシャットアウトしていく。
別に美桜が悲しむ必要なんてない。これだけ悲しんでもらえれば敦斗も本望なのではないだろうか。そんなことを考えていると突然、蜂矢が立ち上がった。
「みんなで敦斗の葬式に行こうぜ。全員で敦斗のこと見送ってやろう? ねえ、先生。いいでしょ?」
「ああ……そう、だな。細村のご両親に確認を取ってからになるとは思うが問題ないと思う。みんなで、細村に……最後の、お別れを……」
岡野の涙混じりの声を聞いて、教室のあちこちですすり泣く声が聞こえてくる。こんなにもたくさんの人に想われている敦斗は凄いと思う半面、この中の何人が本当に敦斗のことを想って泣いているのだろうと考える。雰囲気に流されている人、悲劇のヒロインを演じている人、そして泣かないと周りから酷い人間だと思われるから泣いている人、いろんな人がいるはずだ。
「嘘……でしょ?」
「…………」
岡野の言葉を聞いて一瞬、教室の中が無音になった。けれどすぐにざわめきが大きくなり、みんな口々に岡野に尋ねる。女子の中には泣き出してしまう子もいた。
美桜も思わず耳を塞ぎたくなった。信じたくなかった。けれどそんな自分の感情に気づき――蓋をするように頭を振った。きっと敦斗だって美桜になんて悲しんで欲しいなんて思っていないはずだ。恨まれていて当然、なのだから。そんな美桜に悲しまれたりなんかしたら、成仏できるものもできないだろう。小さく息を吐くと、何でもないふりをして顔を上げた。
「冗談、ですよね? だって、まさか……」
震える声で蜂矢がもう一度尋ねる。けれど岡野は無言で首を振った。「そんな……」と力なく声を上げ頭を抱える蜂矢の声に重なるように、しゃくり上げる心春の声が聞こえた。もしかしたら心春は敦斗の死を知っていたのかもしれない。なぜだかわからないけれどそんな気がした。
周りの女子もそんな心春に気づいたのか、背中をそっと撫でる。けれど誰も何も言えない。信じたくないのだ。
そんなクラスメイトたちを美桜はなんの感情の起伏も出さないまま見つめていた。敦斗の死に対しても可哀想だとは思うけれどそれ以上の感情はない。むしろクラスメイトが一人死んだぐらいであんなふうに泣けるものなのかと、泣き声が聞こえれば聞こえるほど心のざわつきをシャットアウトしていく。
別に美桜が悲しむ必要なんてない。これだけ悲しんでもらえれば敦斗も本望なのではないだろうか。そんなことを考えていると突然、蜂矢が立ち上がった。
「みんなで敦斗の葬式に行こうぜ。全員で敦斗のこと見送ってやろう? ねえ、先生。いいでしょ?」
「ああ……そう、だな。細村のご両親に確認を取ってからになるとは思うが問題ないと思う。みんなで、細村に……最後の、お別れを……」
岡野の涙混じりの声を聞いて、教室のあちこちですすり泣く声が聞こえてくる。こんなにもたくさんの人に想われている敦斗は凄いと思う半面、この中の何人が本当に敦斗のことを想って泣いているのだろうと考える。雰囲気に流されている人、悲劇のヒロインを演じている人、そして泣かないと周りから酷い人間だと思われるから泣いている人、いろんな人がいるはずだ。