それと同時に、胸の奥に鈍い痛みを感じる。どんなに親しく敦斗が話しかけてくれたとしても美桜が敦斗にしてしまったことが消えるわけではない。
 
「……それじゃあ未練、纏めていこうか」

 まだ色々と語っていた敦斗の言葉を遮り、美桜は敬一の棚の上に置かれたプリンターから何枚かのコピー用紙を取り出すと机の上からペンを手に取った。勉強机の上にそれを置くと、敦斗も覗き込んだ、

「とりあえず学食でしょ」
「それホントに未練なの? ほら、昨日言ってたじゃん。好きな子がいたって。そっちじゃないの?」
「えーまあ、うーん。でもさ、だとして美桜に何ができる?」

 美桜は敦斗の言葉に口ごもる。確かに美桜にできることなんて限られてはいる、けれど。

「ラブレターを渡す、とか」
「誰が書くのさ」
「私が代筆して……」
「それで渡すの? 悪戯だと思われない?」

 敦斗の言うとおりだ。なんなら悪意のある嫌がらせにすら思われそうだ。それなら下駄箱かロッカーに入れれば、とも思ったけれど今度は『学校の階段 死人から届くラブレター』みたいな噂が立ってしまいそうだ。

「あ、それじゃあ私が生前相談されてたから伝えにきた、とか」
「学校で一度も話したことのない俺らが恋愛相談までした仲に思える?」
「思えない、ね」

 色々考えてはみるけれどどれも決め手に欠けるどころか、どう考えても無理そうで頭が痛くなる。それなら確かに敦斗の言うとおり学食や他のことを当たった方がまだ可能性は高そうだ。

「ごめん……」
「いや、気にしないで。そもそもそれが未練なのかどうかもわかんないし。と、いうか好きな奴が未練とか重すぎだからさ。俺ほかにも色々したいことあったしそっちかも」

 敦斗が笑いながら言ってくれるのがせめてもの救いだった。結局、コピー用紙には『学食』とだけ書かれ、なんとも間の抜けた感じになってしまった。自分自身の頼りにならなささが嫌になる。償う機会を与えてもらえて有り難いはずなのに、これっぽっちも役に立たないなんて。

「……とりあえず今日のお昼学食に行くけど、それ以外に何かあれば教えて」
「んじゃ、放課後までに考えとくよ」

 敦斗の言葉に頷くと美桜は自室に戻って学校の準備をした。今日の授業に必要なものを鞄に詰め込むと、敦斗とともに家を出た。

「なんか変な感じだなぁ」