こんな生活がこのまま続くと、そう思っていた。おばあざんも小康状態を保ちながら、敦斗とも少しずつ仲良くなっていって。そういえば、いつの間にか敦斗は美桜のことを名前で呼ぶようになっていた。「なんで?」と聞いたら「友達だからいいじゃん」と敦斗は笑っていた。美桜にも名前で呼んでいいと言っていたけれど、今も美桜は「細村」と名字で呼んでいた。もしこのまま、今よりももっと仲良くなれたら「敦斗」って呼べる日が来るかも知れない。そんな淡い予感にほんの少し心が弾んだ。
でも――終わりは、唐突にやってくる。
その日、保健室でプリントをしていた美桜は授業中だというのに廊下を走る音が聞こえることに気づいた。そして、その音が保健室に近づいていることも。
大きな音を立て保健室のドアが開いた。そこには真っ青な顔をした敦斗が立っていた。その姿だけで何があったか美桜にはわかってしまった。
「今、母さんから連絡があって……ばあちゃんが……」
「早く行かなきゃ!」
「美桜も、行くだろ……?」
行くって言ってよ、美桜には敦斗がそう言っているように聞こえた。頷くと美桜は保健室の先生に「早退します」と言って荷物を纏める敦斗と学校を飛び出した。
どうか間に合って。一秒でもいいから、おばあさんの命がなくなる前に病院に……!
「あっ」
「美桜!?」
気持ちが焦ったせいか、足がもつれ、気づけば美桜は地面に身体を打ち付けていた。全身が痛い。スカートから覗く膝小僧は皮膚が裂け、血が滲み始めていた。無理矢理立ち上がろうとするけれど、痛みでその場にしゃがみ込む。どうやら足をくじいてしまったようだ。
このままでは間に合わない。美桜は敦斗に叫んだ。
「先に行って!」
「でも……!」
「早く行かないと、間に合わなくなるよ! そんなの、絶対後悔しちゃうから!」
美桜の言葉に敦斗は躊躇いながらも頷いた。
「ごめん」
そう言って敦斗は駆けていく。だんだん小さくなる背中を見つめながら、息を吐いた。安心したら余計に傷口が痛み出す。ゆっくりでいいから病院に向かいたいのだけれど。
「いっ……た、い」
やはり足に力を入れることができない。とりあえず道の端に避けて動けるようになるまでジッとしていよう。なんとか移動をすると、美桜は額に滲んだ脂汗を拭った。
でも――終わりは、唐突にやってくる。
その日、保健室でプリントをしていた美桜は授業中だというのに廊下を走る音が聞こえることに気づいた。そして、その音が保健室に近づいていることも。
大きな音を立て保健室のドアが開いた。そこには真っ青な顔をした敦斗が立っていた。その姿だけで何があったか美桜にはわかってしまった。
「今、母さんから連絡があって……ばあちゃんが……」
「早く行かなきゃ!」
「美桜も、行くだろ……?」
行くって言ってよ、美桜には敦斗がそう言っているように聞こえた。頷くと美桜は保健室の先生に「早退します」と言って荷物を纏める敦斗と学校を飛び出した。
どうか間に合って。一秒でもいいから、おばあさんの命がなくなる前に病院に……!
「あっ」
「美桜!?」
気持ちが焦ったせいか、足がもつれ、気づけば美桜は地面に身体を打ち付けていた。全身が痛い。スカートから覗く膝小僧は皮膚が裂け、血が滲み始めていた。無理矢理立ち上がろうとするけれど、痛みでその場にしゃがみ込む。どうやら足をくじいてしまったようだ。
このままでは間に合わない。美桜は敦斗に叫んだ。
「先に行って!」
「でも……!」
「早く行かないと、間に合わなくなるよ! そんなの、絶対後悔しちゃうから!」
美桜の言葉に敦斗は躊躇いながらも頷いた。
「ごめん」
そう言って敦斗は駆けていく。だんだん小さくなる背中を見つめながら、息を吐いた。安心したら余計に傷口が痛み出す。ゆっくりでいいから病院に向かいたいのだけれど。
「いっ……た、い」
やはり足に力を入れることができない。とりあえず道の端に避けて動けるようになるまでジッとしていよう。なんとか移動をすると、美桜は額に滲んだ脂汗を拭った。