それから順調に男子メンバーに声をかけ、投票に協力してもらう。もうほとんど、結果は見えていた。それでも、男子全員の意見を求めるため、さらに翌日の金曜日、最後の一人に声をかけた。5限目と6限目の間の十分休みだったので、手短に話をして投票をしてもらう予定だった。
「なんだ、これ」
最後の一人——板倉奏太は、差し出された白い紙を訝しげに見つめた。女子生徒の「名簿」を裏返して見せたため、何のことだかさっぱり分からないという彼の反応は当然のことだった。しかし俺は、早く事を終えてしまいたいばかりに、彼に対してとても雑な説明を行う。
「見たら分かるだろ」
「見たらって……」
そこで板倉は、白い紙をひっくり返した。
「出席簿?」
「違うって。ランキング」
「ランキング?」
なんだこいつ、ちょっとは何か思い浮かんだりしないのか。大体、“可愛い女子ランキング”なんか、ほとんどのやつらが中学でもやったって言っていたぞ。
ちょっと理解力が足りないんじゃねーの。
「だーかーらー、女子のランキングだよ。うちのクラスの。かわいい女子ランキング」
「かわいい女子ランキング」
オウム返しでしか返答してこない板倉に少々イラつきつつも、これ以上喧嘩ぽくなっても時間がかかるだけと思い直した。
「そう。クラスの女子の中で、かわいいと思う人に票を入れて回してくれ。もちろん、男子だけだぞ。一人三票まである」
チラチラと、「ねえ、あの二人」と俺たちの方を見ながら話している女子たちの視線が気になった。正直、板倉とは普段から話をするような仲ではないため、不思議に思われたのだろう。俺はさっと自分の席に座った。
板倉奏太。
見た目はどこからどう見ても、量産型のフツウ男子。クラスに一人、いや三人いてもおかしくないタイプ。そこそこ勉強ができて、先生たちから信頼を得ている。かといって目立つタイプではない。確か、陸上部に入ってるんだっけ。そこだけはちょっと意外だ。文化系男子のイメージがあった。
とにかく、俺とこいつはこれまでもこれからも、まったくと言っていいほど関わりを持たないだろう。
ため息をついてから周りを見回し、ペンを握り票を入れてくれた。あの様子だと、きちんと三票入れてくれたようだ。
ペンを置いた後も他人に見られていないかどうか気になるのか、後ろを振り返っていた。票を入れた相手のことが気になったのだろうかと思い、彼の視線の先を見た。
しかし、そこにいたのは一番後ろの窓際に座る、岡田京子という女子だった。彼女に票を入れたとは思えなかったため、さきほどの予想はどうやら間違いだったらしい。
岡田京子といえば、一匹狼で、教室でほとんど口を利かない。女子の友達もいないのか、友達と楽しく過ごしているところを見たことがなかった。
だから当然のように、これまでの投票では一票も入っていない。板倉が入れていれば話は別だが、おそらく彼も岡田京子には投票していないだろう。
「なんだ、これ」
最後の一人——板倉奏太は、差し出された白い紙を訝しげに見つめた。女子生徒の「名簿」を裏返して見せたため、何のことだかさっぱり分からないという彼の反応は当然のことだった。しかし俺は、早く事を終えてしまいたいばかりに、彼に対してとても雑な説明を行う。
「見たら分かるだろ」
「見たらって……」
そこで板倉は、白い紙をひっくり返した。
「出席簿?」
「違うって。ランキング」
「ランキング?」
なんだこいつ、ちょっとは何か思い浮かんだりしないのか。大体、“可愛い女子ランキング”なんか、ほとんどのやつらが中学でもやったって言っていたぞ。
ちょっと理解力が足りないんじゃねーの。
「だーかーらー、女子のランキングだよ。うちのクラスの。かわいい女子ランキング」
「かわいい女子ランキング」
オウム返しでしか返答してこない板倉に少々イラつきつつも、これ以上喧嘩ぽくなっても時間がかかるだけと思い直した。
「そう。クラスの女子の中で、かわいいと思う人に票を入れて回してくれ。もちろん、男子だけだぞ。一人三票まである」
チラチラと、「ねえ、あの二人」と俺たちの方を見ながら話している女子たちの視線が気になった。正直、板倉とは普段から話をするような仲ではないため、不思議に思われたのだろう。俺はさっと自分の席に座った。
板倉奏太。
見た目はどこからどう見ても、量産型のフツウ男子。クラスに一人、いや三人いてもおかしくないタイプ。そこそこ勉強ができて、先生たちから信頼を得ている。かといって目立つタイプではない。確か、陸上部に入ってるんだっけ。そこだけはちょっと意外だ。文化系男子のイメージがあった。
とにかく、俺とこいつはこれまでもこれからも、まったくと言っていいほど関わりを持たないだろう。
ため息をついてから周りを見回し、ペンを握り票を入れてくれた。あの様子だと、きちんと三票入れてくれたようだ。
ペンを置いた後も他人に見られていないかどうか気になるのか、後ろを振り返っていた。票を入れた相手のことが気になったのだろうかと思い、彼の視線の先を見た。
しかし、そこにいたのは一番後ろの窓際に座る、岡田京子という女子だった。彼女に票を入れたとは思えなかったため、さきほどの予想はどうやら間違いだったらしい。
岡田京子といえば、一匹狼で、教室でほとんど口を利かない。女子の友達もいないのか、友達と楽しく過ごしているところを見たことがなかった。
だから当然のように、これまでの投票では一票も入っていない。板倉が入れていれば話は別だが、おそらく彼も岡田京子には投票していないだろう。