蒸し暑い熱気にさらされながら、俺は水菜家の前へとやって来る。
田舎の一軒家らしい平屋のチャイムを鳴らすと「ブブー」という、これまたいかにも古めかしいチャイム音が響いた。
そして「はいはい~」と家の中から聞こえて引き戸が開かれると、割烹着姿の中年の女性が姿を現した。
「あら、慎太郎くん! 久しぶりね~、もしかして、わざわざ翠を迎えに来てくれたの?」
「ええ……まあ」
「そう! 全く、あの子ったらいっつも慎太郎くんに甘えてばかりねぇ~。そうだ、あの子、大学でもちゃんとやってる? 昔からせっかちな子だから、家を出るって言った時も本当に心配で……」
おばちゃんは、困惑する俺をよそに次々と質問を投げかけてくる。
翠のおばちゃんとは、自分の両親たちと同様、四年も会っていなかったけれど、全然変わっていないな、と、心の中で呟いておいた。
「って、話してばっかりじゃ駄目よね。あの子すぐに呼んでくるからちょっと待っててね。あっ、それとも上がっていく? 丁度、スイカを貰ったところなのよ」
「あー、いえ。大丈夫です」
生憎、スイカは丁度食べたところだったし、そんなことをしたら翠にまた小言を言われそうだ。
俺が丁寧に断ると、おばさんも事情を理解していたのか、すぐに翠を呼んできてくれた。
そして、俺を呼び出した張本人は、にんまりと笑いながら俺の前に姿を現した。