そんなことを考えながらチケットを購入して館内へと入っていくと、夏休みということもあって、小さな子供も結構いるみたいで、元気よく走り回っていた。

「こら、駄目よハナ。他の人に迷惑かけちゃうでしょ!?」

 それを母親らしい人物が注意しても、子供は聞いているのかいないのか、今度はキャラクターが印刷されたパネルの前に立ち止まった。

「おかーさん! プリモア! ハナ、プリモアと一緒に写真撮りたい!」

 目を輝かせながら、一緒に写真を撮ってもらうように母親にせがんでいた。

 母親も、困った顔をしつつも、顔を綻ばせて娘の要望に応えるため鞄からスマートフォンを取り出して写真を撮る準備をする。

 俺はそんな風景をなんとなく眺めていたのだが、ふと隣の先輩を見ると、俺と同じように子供と母親の様子を見ていて、その眼差しがいつもの先輩とは違っていた。

「……先輩?」

「……えっ? ああ、すまない……」

 気になって声を掛けてみると、はっ、と気が付いたように身体を震わせた。

 だが、俺が声をかけたあとも、先輩は親子の様子を気にしているようだった。