「俺は、人と話すのも、人と関わることも嫌いでした。だけど、紗季先輩だけは違いました」

 紗季先輩は俺を『孤独』から救ってくれた。

 俺と同じ目をした少女もまた、『孤独』を背負っているように見えたから。

 共依存、という言葉を思い出す。

 あまり肯定的な言葉としては使われることはないけれど、多分、俺と紗季先輩の関係を表すにはぴったりな言葉だ。

「俺にとって、先輩と過ごすあの図書室での時間が、この場所と一緒なんです」

 今でも俺が抱いているこの感情の正体が、自分でもよくわかっていない。

 それでも、もう伝えることができないと思っていたこの気持ちを、先輩に伝えることができたような気がした。

「……そうか」

 先輩の顔が夕日の光のせいで、上手く直視することができない。

「それは、私にとっては、少し誇らしいことなのかもしれないね」

 ――そして、夕焼けが少しずつ落ちていく中、

「慎太郎くん……」

 ――紗季先輩は、俺にこんなことを告げた。


「明日は、私とデートをしてみる気はないかい?」


 俺が、その言葉の意味を飲み込むまで、紗季先輩はずっと楽しそうに笑みを浮かべていたのだった。