七月二十七日、月曜日。
翠から、紗季先輩にまつわる話を聞いた翌日。
俺はまた、学校まで続く坂道を自転車で漕いでいた。
昨日はほとんど眠れなかったため、重い瞼を擦りながらの登校になってしまう。
それでも、夏の暑さが容赦なく俺を襲ってきて、ペダルを踏むたびに身体から大量の汗が流れてきて気持ち悪い。
あれから、翠からは何も連絡がない。そのことに罪悪感を覚えると同時に、昨日翠から話されたことが頭の中で何度も繰り返されて、とても穏やかに眠れるような心情ではなかった。
俺の知らなかった、紗季先輩の一面。
そして、俺が知っている紗季先輩は、この夏、自ら命を絶つ。
まさか、昨日の翠の話と、何か関係しているのだろうか?
先輩が、知らない誰かとホテルで会っていたのだとしたら……。