「……ん?」
だが、そんな俺の心境とは裏腹に、窓の外から軽やかな祭囃子の音頭が聴こえてきて、いつの間にか、外の景色も夕暮れに近いものになっていた。
「……ああ、そうか。今日って神社の祭りがある日だったっけ」
太鼓の音で、俺の古い記憶が浮かび上がってきた。
別段珍しくないことだが、この町でも近くの神社の境内で縁日の祭りがおこなわれる。田舎らしい小さな規模の祭りだが、それなりに人も集まって、打ち上げ花火なんかも上がったりする。
俺も子供の頃は屋台を回ったりしていたものだけど、中学になった辺りで行く相手もいなくなったので疎遠になっていた。
それこそ、今のように外から聞こえてくる音を聞きながら、図書室で借りてきた本を読んでいて――。
「……別に、もう関係ねえよ」
俺は、外れてしまいそうになった記憶の蓋を、無理やり閉じようとする。