俺の知っている彼女は、この夏の間に……自殺をしてしまう。


 彼女は、自分の部屋で、首を吊って自殺をしたそうだ。

 青野(あおの)先生から連絡があって、俺は何がなんだかわからないまま、数日間を過ごすことになる。

 そして、先輩のことが町でも噂話が流れるようになったころ、俺はようやく、青野先生と一緒に紗季先輩の家を訪れることができた。

 そこには、仏壇の前に紗季先輩の写真が置かれてあったのに、俺はまだ、彼女が死んだことを受け入れられなかった。

 そして、立ち会った紗季先輩の母親も、憔悴しきっていたのか、あまり言葉を交わすことなく、俺はその場をあとにした。

 それから、紗季先輩が自殺した理由を色々と調べたそうだが、原因はわからないままだったそうだ。

 学校でいじめのようなことがあった訳でもなく、何かトラブルに巻き込まれているというわけでもなかったと、青野先生からは説明された。

 ただ、母親によると、ここ最近は、たまに不自然な言動をしていたのだが、いつものことだと思い、あまり気にはしていなかったらしい。

 そして、俺も似たような心当たりがあったせいで、あのとき気付いていればと、どうしようもない後悔に襲われるときもあった。

 だけど、そんなときは決まって(みどり)が傍にいてくれて、俺を引き留めてくれた気がする。

慎太郎(しんたろう)は、何も悪くないよ」と、部屋に籠ってしまった俺を、彼女はずっと慰めてくれていた。

 そして、ようやく学校に行けるようになったときには、紗季先輩に関する話題なんて誰も口にはしておらず、彼女のことなんて最初からいなかったように振る舞っていた。