それから、午前中の間、紗季(さき)先輩は本当に付きっ切りで俺の勉強の面倒をみてくれた。

 その間は、近くに紗季先輩の存在を感じ取ることができたのだが、俺はなんともむず痒い思いをしてしまった。

 だが、そのことを先輩が気にしている素振りなんて全くなくて、それがほんの少しだけ不満と思ってしまうのは俺のエゴなのだろうか?

 それはさておき、先輩の指導のおかげで学校から出された課題の問題は、ほとんど自力で解けるようになった。

「……いや、そんなこと気にしてる場合じゃないか」

 そう呟くと、お昼ご飯のお弁当を食べていた先輩が首をかしげたので、俺は「なんでもないです」とだけ言って、自分が家から適当に持ってきた総菜パンを頬張る。

 今は午後になったので、紗季先輩と図書室の中にある図書準備室という場所に移動して昼食を一緒に食べていた。

 ここは主に図書委員会の会議などで使用する部屋なのだが、この学校の図書委員は俺と先輩くらいしかいないので、資料の棚が並んである以外は取り立てて特徴のない場所になっている。

 念のため、不在のカウンターには受付ベルが設置されているのだが、今のところ鳴る気配は全くない。

 というか、この夏休み中、今まで訪問者による昼食の妨害は一度もなかった。

 さて、また脱線してしまったので話を戻すが、俺が今気にしなくてはいけないことは、夏休みの課題などではなく、紗季先輩のことだ。