「先輩、ちなみに今日って誰か来ましたか?」
「今日はまだ誰も来ていないね。もしかしたら、昼頃には誰か来るかもしれないけど」
一応、ざっと図書室を見てみたが、紗季先輩の言ったことに嘘はなく、生徒の姿はどこにもなかった。
そして、隣に座る紗季先輩の横顔を眺めながら、つい考え込んでしまう。
この数日間、先輩に変わった様子は見受けられなかった。
毎日この図書室で過ごし、閉館の時間が来れば別れるだけという、ありきたりな生活を送っていた。
紗季先輩も、終業式以降、あのとき発したような意味深なことは何も言わないし、今だって普通に勉学に取り組んでいる。
こうしてみると、紗季先輩は普通の受験を控えた三年生、といったところだ。
少しそのことについても気になって聞いてみたのだが、先輩は大学からは家を出て都心の大学を受験するらしい。
しかも、驚いたことに、先輩の志望校は俺が通っていた大学と一緒だった。
だから、先輩が受験に合格すれば、本当は大学でも紗季先輩と一緒だったということになる。
もしかしたら、そんな未来も可能性として存在していたのかもしれない。