俺、白石(しらいし)慎太郎(しんたろう)が高校二年の夏に戻って来てから、既に五日が経過していた。

 未だに『これはいつ覚める夢なのか?』と戦々恐々としているが、今はその兆候が全くと言っていいほど感じられない。

 一応、目が覚めたらすぐに鏡の自分を確認したり、スマホで日付を確認することだって怠らない生活が続けているが、幸い、目が覚めると大学生の頃の俺に戻っていた、なんてことは起こっておらず、胸をなで下ろす結果になっていた。


 そうして、俺は毎朝、実感するのだ。

 俺は今、まだ紗季先輩がいる、あのときの夏をやり直しているのだと。


 そして、今日も俺は学生服に着替えて、学校の図書室へと向かう。

 夏休み中の登校ということで、この前とは違い、自転車を使って学校まで向かっていた。

 理由としては、通学中に翠と出会わないからだ。

 翠のテニス部は熱心ではないと言っている割に朝の集合時間が早いらしく、鉢合わせになることもないので安心して登校できる。

 さすがに、翠と偶然出会ったとして、また二人乗りがしたいと言われたところで一切の妥協なく断るつもりだけれど、断り切れるかどうか自信がないところが、ちょっと情けないところである。