その後、紗季先輩は先生に事情を話し、夏休み中の図書室の開放を許可してもらった。
図書委員の担当をしている青野先生は、かなり昔から賀郭第一高校の教壇に立っている先生で、今年で六十歳を迎える現国の先生だ。
らしい、という曖昧な表現をしているのは、俺が青野先生とそれほど接点を持っていないからだ。
会話を交わしたのも、図書委員会に入ったときに、紗季先輩と一緒に職員室まで行って挨拶をしたときくらいだし、そのときも眼鏡をかけてポロシャツに紺色のズボンを履いた地味な先生という感じで、俺に対しても「宜しく頼むね」と言っただけで、それ以降は委員会の仕事についてなど、業務的な内容しか話さなかった。
まぁ、俺にとっては、それくらいの先生のほうが接しやすいし、きっと紗季先輩も同じ感想を抱いているのだろう。
そして、学校からの帰り道で紗季先輩と別れ、こうして自宅に帰って来てからは、クーラーの効いた自室のベッドの上で、改めて今の状況を整理することにした。