だけど、もし、俺がずっと、先輩の傍にいれば……。
「それが……俺からの条件です」
じっと見つめる先輩の瞳の中には、高校生の自分が映っていた。
もう二度と、戻れない時間だと思っていた。
だけど、今の俺は、確かにここにいて、先輩と同じ時間を過ごしている。
どんな原理で、俺がここにいるのかなんて、知ったことじゃない。
俺の行動で、未来を変えられるかもしれない。
「慎太郎くん……」
そして、俺の台詞を聞いた先輩は、ぽつりと呟く。
「それは無理だと思うよ? さすがに……図書室で宿泊することはできないだろうし……」
「……はい?」
「いや、慎太郎くんの気持ちは嬉しいのだけど……『ずっと一緒』というのはどうもね……。家に帰らなければ、きみの親御さんも心配するんじゃないかな?」
真剣にそう告げる彼女に、俺は全身の力が抜けてしまう。
「……あの、先輩? 俺が言ってるのは例えであってですね。本当に四六時中一緒にいたいってわけじゃないですけど……」
「ああ、なるほど」
紗季先輩は、本当に今やっと理解できたといわんばかりに、ぽんっと手を叩いた。
ああ、そういえば、この人はこういうところで天然だったな、と思い出す。
……だから、きっと俺が図書委員に入った理由だって、わかっていないのだろう。