「……あー、暑すぎるだろ、これ」

 蒸し暑い部屋に閉じこもり、俺は持ってきたノートパソコンを開いたままベッドの上で寝転がり、動画サイトで適当な動画を見ながらダラダラと時を過ごしていた。

 着ているシャツは汗まみれで気持ち悪いし、ブオオッとうるさい音を立てながら送ってくる扇風機の風も、焼き石に水状態でほとんど効果はない。

 すぐにでもシャワーを浴びてすっきりしたいが、二階のこの部屋から浴室へ向かうことすら面倒くさい。

 このまま干からびそうになる俺だったが、ギィギィ、と階段を上る人の足音がこちらに近づいてくることに気付いて身体を起こす。

「慎太郎、入るわよー」

 そして、ノックもせずに開けられた扉の先には、三日月形に切ったスイカと麦茶の入ったコップをお盆に載せた母さんの姿があった。

「……はぁ、呆れた。あんた、大学のレポートやるからって部屋に行ったんじゃなかったの? ゴロゴロしてるだけなら、叔父さんたちと一緒にいればいいじゃない」

「休憩してただけだよ。つーか、なんでクーラー壊れてるの?」

 すかさず俺がこんな状況になっている原因について言及すると、母さんはあっさりと言い返してきた。

「仕方ないでしょ。あんたがいなくなってから全然使ってなかったんだから。扇風機も出してあげたんだから、今はそれで我慢しなさい」

 なぜ俺が怒られなければならないのかと不満を漏らしたくもなるが、そんなことをしても壊れたクーラーが直るわけでもないので、それ以上は何も言わないことにした。

 しかし、母さんはどうやら違ったようで、俺に対しての不満をこれでもかとぶつけてくる。

「だいたい、大学に行ってから全然連絡してこないから、お父さんと二人で心配してたのよ。あんた、お母さんが連絡しなかったら、今年も帰ってこないつもりだったでしょ?」

「それは……」

 図星だったので、何も言い返せなかった。

 本当なら、今頃大学の近くに借りたアパートで、来期で必要なゼミのレポートをまとめているはずだったのに、どうしてこんなことになってしまったのだろうか。

「全く……(みどり)ちゃんは毎年帰って来るっていうのに、あんたは親不孝者だよ。ほら、スイカと飲み物置いていくから、キリがいいところでちゃんと降りてくるのよ。わかったわね?」

 最後まで口うるさく小言を挟んでいった母さんは、また親戚たちが集まっているリビングへと戻っていった。