体育館で行われた終業式が終わり、教室に戻って担任の先生から夏休みの注意事項が伝えられる。

「それじゃあ、みんな。あまり休みだからって気を緩めないでね。特に、賀郭神社のお祭りでは、はしゃぎすぎないように」

 そういって、先生は日直に最後の挨拶を指示したのち、教室を退出する。

 同時に、教室には喧騒が渦巻き「よっしゃー! 夏休みだぜ!」という男子生徒の叫びに笑いが生じた。そして、皆それぞれが友達に声を掛け合って教室を後にしていく。

 俺も、自分の鞄を持って教室を出ようとしたときだった。

「ねえ、慎太郎(しんたろう)

 席を立った俺の前に、(みどり)が立ちふさがる。

 あの団子髪の女子生徒はおらず、今は翠一人だ。

「また、黒崎(くろさき)先輩のところに行くの?」

 そして、なんの前置きもなく、翠はそう俺に問いかけてきた。

「……行くけど、なんでそんなこと、お前が気にするんだよ?」

 理由がわからず、やや不貞腐れた声色で質問を投げかけてしまった。

「……別に、ちょっと気になっただけ」

 それだけいうと、翠は俺から逃げるようにして立ち去ってしまった。