「なんで……こんなカレンダーが貼ってあるんだ?」
まさか、母さんがずっとこの年のカレンダーをそのまま貼っていたのか?
「……いやいや、ありえないだろ」
だが、俺は自分でたてた仮説をすぐに自分自身で否定した。
母はそんなずぼらな性格ではないし、五年前といえば、俺はまだ高校二年生の時だ。
そのときは、この部屋を毎日使っているのだから、さすがにカレンダーくらいは自分で捲りもするだろうから、気付くはずだ。
それに、今は八月なのに、カレンダーが七月で止まっているのも気持ち悪い。
……いや、待てよ。
2015年、7月。
そして、母が俺にかけた、言葉の意味。
「……まさか!!」
俺は部屋から飛び出して、急いで洗面台へと向かう。
「ちょっと、慎太郎! 静かにしなさい!」
俺はリビングから聞こえてくる母からの叱責を無視して、洗面台の鏡の前に立つ。
「……やっぱ、これって」
自分自身のことだからなのか、それとも今まで提示されてきたものがヒントのようになっていたから、すぐにその解答にたどり着いたのかは、正直判断ができない。
だが、これだけは、はっきりと断言できる。
鏡に映っている俺は、五年前の高校二年生だった頃の俺だった。