「……うぐっ、気持ちわりぃ……」
俺はベッドから起き上がろうとするが、三半規管が正常に機能していないのか、目の前の光景がグルグルと回り続けていた。
それでも、なんとか我慢していると、視界は元に戻り、見慣れた部屋の様子が目に映った。
ああ、そうか。俺は昨日から実家に帰って来ていたんだっけ。
しかし、部屋のカーテンから漏れる太陽の光から察するに、どうやら俺は夏祭りから帰って来て、いつのまにか寝落ちしてしまったらしい。
……ただ、その前に何か重要なことをしていたような気がするが、どうも記憶が曖昧で思い出せない。
寝ている途中で変な夢もみたような気がするのだが、その夢は、まるでノイズがかかっているように不明瞭なものになってしまっている。
まぁ、夢なんてそんなものだろう。
俺は乱暴な手つきでカーテンを引いて、朝日を浴びる。
それと同時に、机に置いてあった目覚まし時計を見ると、時刻は七時五十分と表示されていた。
大学が夏季休暇に入ってから、こんな朝早く起きることなんてほとんどなかった。
別に、起きたところでやることなどないので、クーラーの効いた部屋でもうひと眠りしようとしたところで、違和感に気付く。
「あれ……? クーラーって、壊れて動かなかったよな……」
そのはずなのに、今はしっかりと涼しい風を送り出してくれている。
俺が首を傾げたと同時に、一階のリビングから大声が聞こえてきた。