「……はぁ、はぁ」
全速力で向かった結果、俺はフラフラになった状態で賀郭神社に到着する。
そのときには、もう日が落ちてしまい、周辺はすっかり暗くなってしまっていて、提灯の灯りがゆらゆらと揺らめいていた。
鳥居をくぐって中に行こうとする人たちは、一体何事かと息切れする俺のことを怪訝な目で見つめるが、そんなことを気にしている暇はない。
早く、紗季先輩を、捜さなくては。
「白石くん!」
俺を呼ぶ声が聞こえて振り返ると、そこには空也さんがいた。
急いで来たのか、髪の毛は整えておらず、少し乱れてしまっていた。
「紗季は見つかったかい?」
そう聞いてくる空也さんに向かって、俺は首を横に振る。
「いえ……俺も……まだ……来たばかり……ですから……」
「そうか」
空也さんは、少し残念そうにしながらも、すぐに気持ちを切り替えたのか、真剣な表情に戻っていた。
「白石くん。一緒に紗季を捜そう」
「……はい」
俺は、空也さんに頷いて、鳥居をくぐって境内までの道のりを歩く。
まだ、祭りは始まったばかりだろうが、人はそれなりに多く、屋台からはお腹を空かせるような匂いが立ち上っている。
ここから紗季先輩を捜し出すのは少々骨が折れそうな気がしたが、捜すしかない。
そして、俺と空也さんは一緒になって紗季先輩を捜すが、境内の道を歩きながら目視しても、紗季先輩らしい人は見つけることができなかった。
「はぁ……はぁ……」
俺は、ここまで来るときに走ってきた疲労や、紗季先輩がいないことに焦りなどが混ざって、身体が鉛のように重くなってしまっていた。
「大丈夫かい、白石くん?」
空也さんも、俺の顔色を見ながら心配そうに声をかけてくれる。
大丈夫だと言いたいところだったけど、正直、今にも倒れそうなくらい身体が辛かった。
「すみません……少し、休んできます……」
そう言い残して、俺は人混みを避けながら境内から少し離れたところで、未来の俺が翠と来たときに見つけた茂みに隠れたベンチのことを思い出す。
あそこで少し休憩しようと、俺は祭りの喧騒から離れて、その場所へ向かった。