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空也さんとのドライブは、小一時間ほどで終了した。
ドライブ中の車内では、空也さんから学校での紗季先輩の様子などを事細かに質問された。
それを俺が答えるたびに、空也さんは驚きの声を上げて反応していた。
「紗季は僕とはあまり話をしたがらないからね。だから、情けないけど紗季のことは、きみのほうがよく知っていると思うよ」
そう言った空也さんは、少し寂しそうな顔をしていた。
本人の言う通り、紗季先輩とはあまり家では会話を交わすことはないらしい。
家の状況が状況だけに、そういう当たり前の会話さえできないのだろうが、空也さんとしても歯がゆい思いをしてしまっているようだ。
「今日は色々と付き合わせちゃって悪かったね」
俺を家まで送った後(自転車は明日の帰りにでも取りにいくことにしよう)、別れる寸前に運転席の窓を開けて申し訳なさそうにする空也さんだったが、俺は首を横に振って答えた。
「いえ、俺も……あの家に紗季先輩の味方になってくれる人が、ちゃんといるんだって思えたら安心しました」
「そうかい。そう思ってもらえると嬉しいよ。ただ……」
と、空也さんは口ごもりながらも、俺に告げる。