――だが、問題はそのあとだ。
今回のことで、紗季先輩の家庭事情が浮き彫りになってきたことで、ある想像を膨らませつつあった。
紗季先輩が、俺に話してくれた家族との関係。
そして、今の母親の態度から、やはり関係性が良好とはいえないことがわかった。
この家には、紗季先輩の居場所がどこにもない。
だから、もしかしたら先輩は――。
「……ねえ、慎太郎」
すると、翠が俺に声をかけてきた。
「あんた、大丈夫?」
だが、いつもの翠とは違い、どこか不安そうな顔で尋ねてくる。
「あんた、今すごい顔してたわよ?」
「えっ? ああ、悪い……考え事しててさ。別に、大したことじゃないから」
そういって笑って誤魔化すが、翠は怪訝そうな目を俺に向けてくる。
「……そう。なら、いいんだけど」
しかし、あまり追及はすることなく、翠は空を見上げて、太陽を眺める。
「ほんと、暑いわよね。どうにかならないのかしら……」
不満そうに呟く翠に、俺は「どうにもならないだろな」と伝える。
その言葉が、自分自身に言っているような気がして、俺はどうしようもなく不甲斐ない気持ちになってしまった。