そんな翠の後ろ姿をみながら、俺は感慨にふける。

 昔、といっても高校生の頃だが、翠は当然、今のように髪を染めることもなく、黒色の髪を短く切ったショートカット姿だった。

 それが都会の美容院で髪をセットしてもらうようになってから、肩甲骨あたりまで伸ばすようになっただけでなく、色も茶色に染めた。

 就職活動の際は、もう少し大人しめの髪の色をしていた気もするが、内定を既に貰ったからなのか、また元の茶髪に戻ってしまっていた。

 ちなみに、俺は絶賛就職活動中である。

 いくつかの企業との面談は行ったものの、どこの企業からも未だにいい返事をもらっていない。

 ずっと俺と同じように子供だと思っていた翠も、どんどんと大人になっていくような感じがして、俺は今の翠と一緒にいることで自分に劣等感を抱いてしまう。

 もちろん、本人にそんなことを言う資格など俺にあるはずもないので、ただ黙ってみているだけだ。

 それでも、今の浴衣姿は、正直に言えば昔の翠の姿のほうが、似合っていた気がする。