「ねえ、慎太郎。あのさ……」
そして、翠はぽつりと、自然な口調で俺に問いかける。
「あたしのこと、好き?」
いつもの強気な様子とは違う翠の声色に、思わずドキリとさせられて、また俺の知らない翠の一面を垣間見た気がした。
そんなことを考えている間も、翠は辛抱強く、俺の解答を待っていた。
だから俺は、正直な気持ちを翠に伝えた。
「……好きだよ。だけど、それは友達として、だな」
「……そう」
まるで、予想していたかのようにあっさりと翠は返事をする。
「……じゃあさ」
そして、翠は続けて、別の質問を投げかけてきた。
「黒崎先輩のことは、好き?」
俺は、その質問に対して、考えることもなく、答える。
「好きだよ」
ああ、そうか。
認めてしまえば、こんなにも楽に、言葉にできるのか。
「今も昔も、ずっと……忘れられないくらい、あの人のことが、好きだったんだ」
「……そう」
だけど、翠は興味なさそうにそう頷いただけで、あとはたった一言だけ、呟く。
「なんか、ムカつく」
翠は、子供のように不貞腐れて、俺から視線を逸らした。
それが、とても翠らしい反応だと思った俺は、思わず笑みをこぼしてしまうのだった。