田舎町とは言っても、神社までの道のりには翠と同じように浴衣を着た人たちを何人か見かけて、それが神社に近づけば近づくほど、人数も増えていく。
「慎太郎は浴衣とか持ってなかったの?」
「ねえよ。あったとしても、面倒だから着ない」
「ほんっと、そういうところは全然変わんないんだから。もっとこう、風情とかを大事にしないと嫌われるわよ」
「誰にだよ」
「そりゃあ、あたしに……かな?」
「だったら別にいい」
「あー! またそういうこと言うー!」
バンッ! と、思いっきり肩を叩かれた俺が翠を睨むと、フンッと鼻息を荒らしてご立腹の表情が浮かべていた。
昔からこういう奴なので慣れてはいるのだが、いざ相手をすると面倒くさくて、何より疲れる。
「あんたもさぁ、久々に帰ってきたっていうんなら、もう少し懐かしむとかないの? 祭りに参加するのだって久しぶりでしょ?」
「……別に、たかだか四年くらいだろ、ここを離れたのって。それに、お前だって俺と一緒だし、普段と変わらないからな」
俺と翠の腐れ縁は今でも継続しており、俺が都会の大学へ進学したというのに、まさか翠まで同じ大学に進学するとは予想外だった。
ま、学部も全然違うので、キャンパス内で顔を合わせることはそれほどないのだが、勝手に俺の下宿先のアパートに来たりすることもあるので、若干被害を被っているのは事実だ。
それに、今回の帰省のことだって、母親だけじゃなく翠からも口うるさく言われてしまったせいで、八方ふさがりになってしまったところもある。
まさか、この祭りの為だけに俺を呼んだわけじゃないよな?
「そんな訳ないじゃん。あたし、慎太郎と違ってこっちにも友達たくさんいるし」
「だったら、そいつらと行けば良かっただろ」
「そういう問題じゃないんだって……。ああ、もういい。慎太郎に言っても分かってくれないだろうから」
翠は、ますますご立腹になったのか、俺から距離を一歩先へと進んでしまい。顔を合わせようとしてくれなかった。