慎太郎(しんたろう)くんは、夏が嫌いになったことはないかい?」

 唐突に、彼女が俺にそう尋ねてきた。

 綺麗に伸びた、清涼感のある黒色の髪。
 日差しを浴びた形跡がない、白い肌。

 そして、制服の袖からは女性らしい細い腕が伸びていて、その爪先はネイルなどをしておらず自然な光を反射させていた。

 見た目だけなら、気弱な女子生徒を連想しそうな容姿だったが、一年間も彼女と一緒にいた俺には、そんな印象はとっくの昔に消え去ってしまっていた。

 静寂な図書室で、彼女はそのまま俺の隣の席に座りながら、微笑を浮かべて話を続ける。