雨の音に夢中になって佐渡歌に話しかけられてから、私と彼女はいつも一緒にいるようになった。

「ねえ瞳美ちゃんって、算数得意だよね?」

「うーん、得意なのかな」

「だって、いっつもテストで100点とるじゃん」

「でもそれは、テストが簡単だから」

歌は私の言い分に、ぷうっと頰を膨らませてむくれていた。今の発言では、自慢みたいに聞こえてしまったかもしれない。
けれど、本当に私にとって、小学二年生の算数のテストはとても簡単だった。先生が、「では始めてください」と合図してから50分間のテストの時間、私は最初の20分で問題を解き終わってしまう。だからテストは苦手だった。余った時間に何をすればいいか、分からないから。
雨の日だったら、まだ良い。
たとえ窓の外が見えなくたって、降りしきる雨の音を聞いていれば、私の頭の中で、素敵な音楽が流れ始める。


ポッポロリン
ラララララ
ポッピンポロン
ランランラン

題名のない音楽は、全部私の耳が勝手に作り出した幻想だ。でも、何もすることがないテストの時間には、それだけが楽しみだったのだ。