「早坂君……」

垣内さんが去っていったあと、潤んだ瞳で見つめてくる雨宮さんを、俺はその場で抱きすくめたい衝動に駆られるのをぐっと堪えた。

「大丈夫、だったか」

もっと、上手に彼女のことを気遣えたら良いのに、先ほどまで煮えたぎっていた垣内さんへの嫉妬と怒りを落ち着けるのにちょっとばかり時間がかかったせいで、ぎこちない言葉が漏れ出た。

「大丈夫……。でも、ちょっとびっくりしちゃって」

こんな時にも関わらず、力なく微笑む彼女は月明かりに照らされて、今まで見てきたどんな彼女より美しく映った。