(んんっ……)
目が覚めると、見慣れない天井が目に入って、私は急に現実に引き戻される。
ここ、どこだっけ……?
夢があまりにリアルだったり、衝撃的だったりすると、その夢を見た朝は決まって、現実世界に意識を戻すのに苦労してしまう。
「ひとみー」
私の耳元で、彼が私の名を呼ぶ気配がして(・・・・・・・)、私はゆっくりと身体を起こす。
あれ、私は一体何を……。
一瞬分からなくて、私は重たい瞼を頑張って開いてみる。
そして、寝転んでいた私の上に覆いかぶさるようにして私を覗き込んでいる彼が目に入り、
そこでようやく自分が今どういう状況にいるのかを理解した。
(おはよう、真名人(まなと)くん)
彼の目を見て、「おはよう」と口を動かすと、彼の方も再び「おはよう」と言ってくれるのが分かった。
そうだ、ここは。
昨日引っ越してきた、真名人くんの家だ。
私がこれから生活する場所だ。
それが分かってから、さっきの衝撃的なシーンが夢であるということにほっと胸を撫で下ろす。
瞳美(ひとみ)、よく寝たな」
真名人くんが、両手と口を動かして呆れたようにそう言ったあと、私の頭をわしゃわしゃと撫でた。
(うん、私ね、夢見てた)
私も、彼と同じように口を動かした。
「そうか、どんな夢?」
楽しい夢? それとも悲しい夢?
彼はいつも、熱心に私の話を聞いてくれる。だから私も、ゆっくりと彼の目を見てお話することができた。
(悲しい夢。私が、事故に遭ったときの夢……)
そう言いながら、私は両手のひらで、自分の耳をそっと撫でる。

私の耳が、聞こえなくなった日の夢———。