『雨宮さん、こんばんは。この間はありがとう。明日は何の授業に出る?』

日曜日の晩、俺は初めて彼女にLINEを送った。
彼女のプロフィール画像は赤、黄、ピンクといった色とりどりの花をちりばめたような画像だった。彼女は花が好きなんだろうか。

初めてメッセージを送る時、緊張で指が震えた。

まるで初恋の女の子にどう声をかけようか逡巡する中学生みたいな自分に呆れて溜息が出た。
ただ、中学や高校と違って、大学ではクラスのような偶然顔を合わせられる環境がないため、こうして積極的に自分から近づかなければならないのだ——というのが、中島大先生の教えだ。

中学生の時も高校生の時も、日曜日のこの時間が憂鬱で仕方がなかった。
でも大学生になったばかりの俺は、これほど気持ちが浮き立っているのが不思議でたまらない。これが恋の力というやつか……。
なんて、まだ出会って間もない女の子に連絡先を聞けただけの分際で舞い上がっている自分を側から見れば、気持ち悪いことこの上ないだろう。
彼女から返事が来たのは、30分後のことだった。

『こんばんは。明日は二限の英語と、三限の生物概論、五限の芸術学に出ます』

返事を見た瞬間、おお、と嬉しくなる。
もちろん彼女から返信が来たこともそうだが、何せ五限の芸術学の講義は自分も出席しようと思っていたものだったからだ。

『それなら俺、五限は雨宮さんと一緒だ。また明日話そう』

ちょっと強引なことを言いすぎたか——と焦ったが、送信してしまったメッセージはもう取り消すことができない。俺は次の彼女の返事が来るまで、「あんなこと送らなければ良かった」と悶々としながら待っていた、が。

『それは嬉しいです。うん、明日また話せるの、楽しみにしてます』

たったそれだけの返事に、俺の心はすうっと軽く、羽が生えたかのように舞い上がりそうだった。

ああ、もう、本当に。

俺はきっと病気だ。