「まったく、お前ってやつは……」
翌日の火曜日。二日目の大学で、俺は早速友人の中島に呆れられていた。
昨日、俺はサッカー男子に捕まって困り果てていた女の子の手首を強引に掴んで「こっち」とそのまま彼女を引っ張って歩いた。
彼女は何か言いたげな顔をしていたが、ピンチに陥ったところを助けてもらったという自覚があるのか、口をつぐんで俺の言う通りに大学の外まで一緒に歩いてくれた。
途中何度も他のサークルや部活動生に捕まりそうになりながら俺たちは彼らの間をすり抜けて逃げた。一度捕まれば永遠に勧誘されるに決まっている。そんなの面倒じゃないか、というのが新入生の総意だろう。
「ここまで来れば、大丈夫だろ」
「た、助かりました」
その時俺は、初めて彼女の声を聞いた。
早歩きして疲れたのか、息が少し浅くなっていたが、その透明でどこか儚げな声に、俺は一瞬ドキッとさせられた。
「いや、なんか大変そうだったから」
「ありがとうございます。助けてくれて」
そう言って彼女は軽くウェーブのかかった黒髪をした頭をぺこりと下げた。
「いいよ。俺も早くあの場から逃れたかったしさ」
「そう、なんですね」
「ああ。あんなの疲れるだろ。行きたいクラブがあれば自分から行くってな」
「ふふっ。そうですね」
ふわりと笑う彼女が花のように可愛らしくて、俺はしばらく彼女に見とれてしまった。
「あのさ、俺早坂真名人っていうんだ。同じ大学に入ったのも何かの縁だし、良かったらこれからよろしくな」
「はい。私は雨宮瞳美といいます。こちらこそ、よろしくお願いします」
あまみやひとみ。
心の中でその名を3回唱えて、「じゃあ、今日はこの辺で」と言って俺は彼女と別れた。
別れ際、彼女は俺の姿が見えなくなるまでずっとお辞儀をしていた。
やけに律儀な子だと、彼女の姿が記憶に焼きついた。
翌日の火曜日。二日目の大学で、俺は早速友人の中島に呆れられていた。
昨日、俺はサッカー男子に捕まって困り果てていた女の子の手首を強引に掴んで「こっち」とそのまま彼女を引っ張って歩いた。
彼女は何か言いたげな顔をしていたが、ピンチに陥ったところを助けてもらったという自覚があるのか、口をつぐんで俺の言う通りに大学の外まで一緒に歩いてくれた。
途中何度も他のサークルや部活動生に捕まりそうになりながら俺たちは彼らの間をすり抜けて逃げた。一度捕まれば永遠に勧誘されるに決まっている。そんなの面倒じゃないか、というのが新入生の総意だろう。
「ここまで来れば、大丈夫だろ」
「た、助かりました」
その時俺は、初めて彼女の声を聞いた。
早歩きして疲れたのか、息が少し浅くなっていたが、その透明でどこか儚げな声に、俺は一瞬ドキッとさせられた。
「いや、なんか大変そうだったから」
「ありがとうございます。助けてくれて」
そう言って彼女は軽くウェーブのかかった黒髪をした頭をぺこりと下げた。
「いいよ。俺も早くあの場から逃れたかったしさ」
「そう、なんですね」
「ああ。あんなの疲れるだろ。行きたいクラブがあれば自分から行くってな」
「ふふっ。そうですね」
ふわりと笑う彼女が花のように可愛らしくて、俺はしばらく彼女に見とれてしまった。
「あのさ、俺早坂真名人っていうんだ。同じ大学に入ったのも何かの縁だし、良かったらこれからよろしくな」
「はい。私は雨宮瞳美といいます。こちらこそ、よろしくお願いします」
あまみやひとみ。
心の中でその名を3回唱えて、「じゃあ、今日はこの辺で」と言って俺は彼女と別れた。
別れ際、彼女は俺の姿が見えなくなるまでずっとお辞儀をしていた。
やけに律儀な子だと、彼女の姿が記憶に焼きついた。