売り言葉に買い言葉で言い返すと、

「いいえ、あなたは無理よ! 絵を描いたって成功しないことなんて母親の私が一番分かっているわ!」

 何もかも全部切り捨てられる。僕の話なんて母さんの耳には届いていない。

「あなたはこれまで通り医者になりなさい。医者になれば間違ってなかったんだって分かるから」
「いや、だから、」
「これでもう話は終わり」

 一方的に会話を切り上げると、はあ、とため息をついてテーブルに肘をつくと頭を抱えた。

 ……なんだよ、それ。なんで母さんがそんな顔するんだよ。
 父さんなんか一言もしゃべらず、ただ黙って聞いているだけだし。

 どうして伝わらないんだよ。僕はこんなにも拙い言葉で必死に話してるのに。

「もう、いい……」

 理解されないなら、伝わらないなら。

「母さんたちに理解してもらおうとか許してもらおうとか思わない」

 椅子から立ち上がり、二人を見つめた。
こうやって親の顔、ちゃんと見たのはいつぶりだろうか。

「晴海、あなたまさか……」

 怖くて何も言えなかった自分じゃない。
ちゃんと立派に地に足つけて歩いていられる。立派な大人だ。

「母さんや父さんが許してくれなくても、僕は僕の道を歩むだけだから」
「そんなの私は許しませんからね!」
「だからっ、許してもらおうなんて思ってない!」

 僕は自分の選んだ道を進むだけだ。

 その一歩が、今日だ。

「僕は、医者になんてならないし母さんたちの思い通りになんかならない。自分がやりたいことだけをやるつもりだから!」

 投げ捨てるように言うと、僕はリビングを抜け出した。
 玄関へ向かうとき後ろから僕の名前を呼ぶ声がしたけれど、振り向くことはなかった。

 結局最後まで父さんが何かをしゃべることはなかったーー。