「え? ああ…!」
そういえば、岩倉さんに声かけられたままだったことを思い出し、ぐりんっと顔を彼女へと向ける。
瞬間、岩倉さんとぶつかった視線。
「もしかして告白かぁ〜?」
どしっ、と僕の肩にもたれかかる津田くんの腕。
「……へっ、えっ?」
ーーあっ、周りからそう見えるのか!
岩倉さんのために何か弁解をしなければ。
「違う違う!」
「ほんとかよ〜」
「ほんとだってば……!」
津田くんは、サッカー部で明るくていつも中心にいる存在だったけれど、こういうところがたまに苦手だ。
「ねえ、岩倉さん、僕たちそんなんじゃないよね?!」
彼女へ話を振れば「え、あっ…」と言葉に詰まらせて、みるみるうちに顔が真っ赤に染まって口をパクパクさせたあと、
「ーーあっ、ちょ、待っ……!」
何も言わずに背を向けて駆けて行った。
慌てて手を伸ばすけれど、一度も振り返ることなく彼女はいなくなった。
……さいっあくだ。
確実に岩倉さんに嫌われた。
「もーう、津田くんのバカ野郎」
一気に脱力して、かがみ込むと「ごめん」と頭上から落ちてきて、
「もしかして俺、邪魔しちゃった?」
ーー〝もしかして〟じゃなくて〝確実〟に、だ。
「……せっかくのチャンスだったのに」
岩倉さんの走った方へ視線を向けても、彼女が戻って来る気配なんか何一つなくて。
このときの僕は紙ヒコーキのことなんて、すっかり頭の中から消えてしまっていたんだ。