「ごめん! 一方的にしゃべっちゃって」
彼女に嫌われたらどうしよう。
ーーだが、そんな不安もすぐになくなる。
「う、ううん、大丈夫だよ!」
彼女が小さく首を振ったあと、口元を緩めた。その表情を見てホッとした僕は心の中で安堵する。
「岩倉さん、僕に声かけたってことは何か用があったんじゃないの?」
僕に用がある、なんて若干自意識過剰っぽいけれど。
「あ、えっと、実はーー」
目を右に左に小さく揺らしたあと、すうっと空気を取り込んで口を開いた。
「すいませーん!」
突然、声が聞こえて彼女の言葉は飲み込まれる。
代わりに、こつんっ、と足元にぶつかった〝何か〟。
視線を下げて、それを見れば。
「……サッカーボール?」
おもむろにかがんでそれを掴む。
「あれっ、ハル?」
突然、僕の固有名詞を叫ぶ男子の声が聞こえた。「え」困惑した声を漏らした僕は、ボールを掴んだまま顔をあげる。
「津田くん?」
駆け足で僕たちのそばへ来たのは、去年同じクラスだった元クラスメイトだ。
……そういえば去年、サッカー部に所属してるって言ってたっけ。
「こんなとこで何やってんの」
「え、あ……探し物?」
「探し物って?」
「紙ヒコーキ」
サッカーボールを手渡しながらそんな会話を繰り広げると、「紙ヒコーキぃ?」と呆れたように告げられる。
それもそのはず。高校二年生になって紙ヒコーキを作るなんてこの僕くらいだ。
「津田くん見なかった?」
「いや、俺部活中だったから見てるわけないじゃん」
「正論!」
なんてツッコミを入れていると、
「探し物してるわりには女子もいるじゃん」
と、ちら、と僕の後ろの方へ視線を向けた津田くん。