「〝ハルの可能性は無限大だ〟〝真っ白なキャンパスだから進路は選び放題だ〟って。それを聞いて僕、やっぱり諦めたくないって思ったんだよね」
きっと、その言葉がなければ僕はこのまま諦めていたかもしれない。
親の敷いたレールの上をずっと、一生歩き続けたかもしれない。
でも、やっぱり。
「僕は、絵を描くのが好きなんだ。どうしようもなく……好きで、ペンを持つと筆を持つと描きたい想いが止められない。心がわくわくするんだ」
「ハル……」
「きっと誰よりも絵を描くのが好きなんだ」
それは、離れていたからこそ。
今まではシャープペンを持って問題集とばかり向き合っていた。
「だからね……」
けれど、僕がほんとに向き合いたいものは真っ白なキャンパスだった。
「ーー僕、美大に行きたいんだ!」
それは自然と口からこぼれ落ちた。
なんの違和感もなく、当たり前のように。
しばらく静寂な時間に包まれたあと、そっかそっか、とゆっくりと頷いた彼女。
「ハルが何かを隠してることはなんとなく察しがついていたんだけど……そうだったんだね」
「この前は嘘ついてごめんね」
僕が頭を下げると、ううん大丈夫、と言ったあとに、
「誰にだって言いたくないことの一つや二つはあって当たり前だから」
そう言ったあと。でも、と続けると、
「話してくれてありがとう、ハル」
僕を見て柔らかく微笑んだ。
まるで夜空に光り輝く星のように、柔らかい光を放っていた。
ありがとう、がどれだけ力強いのか。どれだけ僕を支えてくれたのか。
「お礼を言うのは僕の方だよ。水帆、話を聞いてくれてありがとう」
そうしたら、ううん、と微笑んだ。
あたりはだいぶ薄暗くて、代わりに街灯がチカッといくつもつき始める。
「まあでも、親に許してもらえるか分からないんだけどね……」
話を打ち明けたことで安堵して気が緩んだのか、すぐに気弱な僕に戻る。
「ほんとはやりたいことがあるんだって親に話してみたらいいんじゃない?」
「いや、うん……でも言っても無駄だってこと分かってるから」
「何が無駄なの?」
「え? だから話すことが無駄だって、」