「まだやんねーの?」
「無理。てか、一限目によくそんな元気あるなぁ…」
「まぁな! だてに運動部入ってないぜ」

 かっかっかっと笑ったあと、ハルは? と尋ねられるけれど、体力がないとかそういう以前の問題で「僕もいいや」と答えると、なんだよ二人ともつまんねー、と苦笑い。
 そのあとに、まあいいや、気が向いたら来いよな! と言うと僕の手からボールを受け取って、じゃーな、と言って駆けて行く。

 その姿はまるで青春を過ごしている高校生のようでキラキラして見えた。

「この時間もあと少しだよな」

 ふいに、夏樹がそんなことを呟く。

「……え?」
「だってさ、三年になったら進学や就職で進路が分かれるだろ? そしたらこうやって遊ぶことも難しくなるだろうし」

 ……そうだ。確かにその通りだ。

 この時間は永遠ではないんだ。
 三年になれば、僕たちは進路に集中しなくてはならなくなる。そうしたらこんなふうに過ごすことも減ってくるのか。

 なんかそれ。

「寂しくなるね」

 思わずポツリと口から漏れた。

「ハル、みんなに好かれてるもんな」
「え、そう? 僕なんて、」

 いてもいなくても同じ。

 いつか時が経って、みんな離れ離れになったらきっと僕のことを思い出してくれる人なんていない。
 だって僕は、心からみんなと向き合うことができてないのだから。

「ハルは、いいやつだよ」

「……え?」
「だからこそ誰にも言えない悩みだってあるんだろうな」
「夏樹…何か知ってるの?」

 まるで、僕のこと理解しているみたいな口ぶりだ。
 それなのに、さあな、と目を逸らした。

 ふと、空を見上げると、グラウンドは広くて空は青くて鳥が自由に飛んでいる。
 空はどこまでもどこまでも続いている。鳥は自由に飛んで回ることができる。

 この広い宇宙のどこに行けば僕は自由になれるのだろうか。

「……早く大人になりたいなぁ」

 思わず口をついて出た。

 すると、それを聞いていた夏樹が、

「ハルが一番遅いかもなー」

 そう言って、僕を見てニヤリと笑った。

「ちょっと、それどういう意味?」
「そのまんま」

 地面を蹴り上げてグラウンドへ向かうから、僕だけが消化不良で。

「夏樹、待ってよ! 今の説明してよ!」

 彼のあとを追いかけた。

 今の時間は永遠ではない。
今の時間は、もう少しで終わる。

 終わりのない時間なんてない。

 だからこそ僕たちは時間を大切に使わなければならない。

 限りある時間だからこそーー。