体育座りをしながら、空を見上げる。

 おー、いい天気だ。おまけに暑くもなく寒くもないちょうどいい風が吹いて、思わず目を閉じて自然に身を委ねる。

「夏樹はさぁ……」

 そよそよとかすかに耳先で風を感じながら。

「進路決まってなくて焦ったりしない?」
「そりゃ焦るに決まってるじゃん。提出期限もうすぐなわけだし」
「うん」
「でも、期限いっぱいまで悩みたいんだよなー」
「え?」

 期限いっぱいまで……?

「悩むの好きなの?」

 ぱちっと目を開けて夏樹を見つめる。

「好きとか嫌いとかそういうわけじゃないけどさ…」

 照れくさそうに鼻先をかいたあと、

「自分の将来に繋がることなんだし悩んで当たり前じゃん。迷って当たり前じゃん。そういうのも今だからこその悩みだし、どんどん悩めばいいって俺は思ってるけどなー」

 と地面に両手をついたあと、空を見上げる。

「どんどん悩めば……」
「悩んで迷って、その悩んでる時間さえも楽しんでしまえばいいんだと思うんだ」
「……悩んでる時間も?」
「そうそう」

 悩む時間を楽しむって、僕にはそんなことできなさそうだ。
 だって、僕に選択肢なんてないのだから。

 僕とはまるで対照的で、夏樹が光だとすれば僕は闇だ。

「おーい、ハル! ボール取ってくれ!」

 ふいに聞こえた声のあと、サッカーボールが失速してコロコロと僕の足元へ転がってくる。
 つま先にコツ、とぶつかった。

「あれ、二人サッカーやんねーの?」

 ボールを追いかけてクラスメイトがやって来た。

「今、休憩中」
「嘘つけ! どうせバレないようにサボってるだけだろ!」
「あ、バレた?」

 夏樹がそんな会話を繰り広げる。