「進路決まったの?」
「あー…僕は、一応…かなぁ」
「なにそれ。すっごい中途半端」

 そう告げられるけれど、肯定も否定もできなくて、へへへ、と気の抜けた声で笑って誤魔化した。

 どうして断言できないんだろう。

 僕の進路なんてずっと前から決まっているのに、それをまだ納得できていないのかな。

「どっちなんだよ」
「さぁ、僕にもさっぱり」

 ほんと、どうかしてる。
自分の進路のことなのにまるで他人行儀。

「何かやりたいことでもあるわけ?」
「え? …うーん、特にはないかな」

 本音をひた隠しにして、僕は嘘をつく。

 そのたびにダメージがきて、僕の心はすり減っていくようだ。

「ふーん。じゃあ俺と同じじゃん」

 ーーううん、全然違うよ。

 夏樹は、これから自分の好きな進路を選べる。選択できる。未来はいくつもの道が用意されている。

「夏樹とおそろいだぁ!」
「それだけはまじ勘弁」

 けれど、僕は好きな道を選べない。
 ずっと親に縛られたままだ。

 「僕のこと好きなくせにー」

 そう言って腕をつんつんとすると、好きじゃないわ! と眉間にしわを寄せるから、ケラケラ笑った僕。

 近づくな、と夏樹に鬱陶しがられるけれど、僕はめげずに距離を詰める。

「進路決まってるからって気緩みすぎだ」
「べつに僕、気なんて緩んでないよ! ただ夏樹が逃げるから!」
「そりゃ追いかけられたら逃げるだろ」

 ぐるぐるとその場を走り回って無駄に疲れただけの僕たちは、エネルギー切れでその場に座り込んだ。

 あー、疲れた。

「僕、もう限界……」
「ハルが追いかけるからだろ」

 へとへとになっているせいでお互いの言葉は切れ味いまいちだ。