そうしたら購買って何時からだっけ? と尋ねられる。水帆と目を合わせていたなんて気づかれていないかとどきどきしながら、十二時からだよ、と教えると、サンキュー! と答えたあと、絶対一番で限定パン買ってやる! と意気込んでいた。
僕は誰にも気づかれないように安堵の息を漏らす。
その後も次から次へとクラスメイトが登校して来る。そうして、あれーハル今日は早いじゃん、と同じことを尋ねられた。
それが何度か続くと、あっという間に教室は騒がしくなる。
そのおかげで水帆と話の続きをすることはできなくなった。
ちら、と水帆へと視線を戻せば、いつのまにか来ていた水帆の友人と話をしていた。
僕のことなんて眼中にないくらい、楽しそうに笑っていた。
その表情を見て、少しだけホッと安堵する。
会話の最後に水帆は、元気がなかった。
いつもは楽しそうにしているのに、さっきの水帆は眉が下がって悲しそうにしていた。
もしかしたら僕が嘘をついたことに気づいたのかもしれない。
だからそんな表情をしたのかも。
進路表が返ってきたことはちゃんと説明できたのに、進路のことを深掘りされたくはなかった。
全部僕の身勝手なわがままだ。
そのせいで水帆を傷つけてしまったのだから。
「……ごめんね、水帆」
教室内はざわざわしていて僕の小さな声なんて、あっという間にとけてなくなる。
彼女についた嘘が罪悪感として僕の真ん中に大きく残ったんだ。