僕はしわくちゃの進路表を握りしめて職員室へやって来た。
「先生これ」
握りしめたそれを差し出すと、進路表と僕の顔を交互に見つめた。
先生が何を言いたいのか僕には分かる。
だから僕は。
「何度も考えましたよ。でもその結果、やっぱりこれにしかたどりつかなかったので」
尋ねられる前に、僕は答えた。
それに、どうせ考えたって無駄らしい。
あんなこと言われてしまえば考えるのもバカらしくなった。それに考えたって結果は同じだ。
だから、結局僕は一週間で、自分の進路を自ら丸投げしたのだ。
「まだ一週間しか経ってないぞ? ほんとにこれでいいのか?」
〝まだ一週間〟……か。
母親とはまるで対照的な言葉だ。
きっと先生の方が僕のことを思ってくれている。心の底から。
でも僕はーー。
「先生、大丈夫ですよ」
僕は、僕の人生から逃げることはできない。抗うことはできない。
僕が進路を変更したい、なんて両親に話でもすれはどんな反応をされるかなんて容易に想像できたし、僕がそんなことを言う勇気なんてはなから用意されていない。
仮に僕がどんなに声をあげたとしても、両親の耳に届くことはない。
それを知っているからこそ僕は親に何も期待しないのだ。
必要以上に言葉を交わさないのだ。
顔を合わせたとき最低限の言葉だけを、最低限の時間だけしか使わない。
「いや、あのな浜野。そんなに焦らなくてもいいんだぞ」
進路表を片手に僕をまっすぐ見つめた。
「僕、焦ってるように見えますか?」
「そういうわけじゃないんだが、なんというか……投げやりに見えるんだよな。そこには自分の意思じゃないみたいな何かが介入しているような」