きっとこれからも一人で抱えていくものだろう。

 それに水帆には、僕がこんな醜い感情を持っているなんて知られたくない。
 知られたら嫌われてしまうかもしれない。
そうしたら彼女は僕のそばから離れてしまうかもしれない。

 それだけは絶対に嫌だった。

 それはもう僕のわがままだ。

「ほんとに僕、元気だから! でも、心配してくれてありがとう」

 さらに元気アピールをすると、そっかそうだよね、と自分を納得させるように頷いたあと、

「ごめんね。私の勘違いだったみたい!」

 と、無理をして笑ったのだ。

 水帆が謝る必要なんてどこにもないのに、謝らせてしまったのは僕の責任だ。

「今の聞かなかったことにしてね」

 嘘をつくと、それが相手に気づかれたとき気を使わせてしまう。
 もっとうまい言葉の交わし方だってあっただろうに、僕ってばなんてだめなんだろう。

 彼女にそんな表情をさせてしまったのは僕だ。

 ふいにスマホを見た彼女は、あっ、と声をあげる。

「私、もう帰らなきゃ!」

 アイスのゴミを袋の中に入れる。

「え、じゃあ僕が家まで、」
「ううん、大丈夫! 家すぐそこだから!」

 送るよ、と最後まで言うことができなかった。
 そうして、じゃあまた明日ね、と手を振ってベンチから立ち上がる。

「ちょ、待っ、水帆…!」

 僕の声に一度だけ振り向くと、また明日、と手をあげて走り去る水帆の後ろ姿。

「あーあ、行っちゃった……」

 あっという間にいなくなり、一人ぽつんと残された公園は、静けさが増してどこか不気味にも感じた。

 せっかく今まで楽しかったのに。

 おもむろに空を見上げる。すんっ、と鼻から空気を吸うと、かすかに秋の匂いが冬に変わろうとしていた。
 もうすぐで季節が変わる。
進路を決める時間は残りわずか。

 僕に残された道は、もう一つしか残されていなかった。