そうして近くの公園へやって来た僕たち。
街灯がいくつもあって明るくて、周りにはカフェやコンビニが建ち並び、全然怖くはなかった。
「ん〜、おいしい」
肌寒い夕方。薄暗い午後十八時。公園のベンチでアイスをおいしそうに食べる水帆の横顔は、なんとも言えないくらい可愛かった。
「寒くないの?」
「ぜーんぜん。おいしいよ。ハルも食べる?」
アイスを掬ったスプーンを僕に手向ける。
「え?! あ、いやー、大丈夫!」
「そう? もったいないなぁ」
Uターンしたスプーンは、水帆の口の中へ消えた。
今、僕がスプーンで食べたら間接キスになっちゃってたよ。
それにしても。
「アイス食べてるの見ると僕まで寒くなってくる」
「ハルって寒がりなの? 名前にハルついてるのに」
「名前についてるのは晴だからね。どうやら暖かい方が好きみたい」
そんな他愛もない会話をしながら袋の中から肉まんを一つ取り出すと、食べようとあーんと口を開ける。
けれど、一人で食べてもおいしくない。
いつも夜ご飯は一人だから、そう思った僕は。
「はいこれ」
肉まんを半分ちぎって彼女へ手向ける。
すると、え、と声を漏らしながらアイスを食べる手を止めて。
「な、なに?」
僕、今まで一人で食べることが多かったから誰かと一緒に食べたかった、なんて言えるわけないから。
「肉まんとか一緒に誰かと食べた方がおいしいってよく言うでしょ」
「そうなの?」
「うん、だからはい」
適当な言い訳を並べると、水帆に向かってさらに手を伸ばす。
そうしたら、ありがとう、小さな声で告げながら恐る恐る半分受け取った。
けれど、戸惑っている様子に見えた。
「んー、おいしい。やっぱり寒いときには肉まんだよなぁ」
水帆が気を使わないように、目線を逸らして肉まんを食べる。出来立てだったから熱くて、はふはふと息を吐きながら食べると口の中から湯気が空へとあがって消える。
そして、おいしいを繰り返しながら食べる。
おもむろに隣へ視線を向けると、ゆっくりと肉まんに口をつけると小さくかじりつく。
「……ほんとだ、おいしい」
ごくりと飲み込んだあと、水帆は口元を緩めて笑った。