キラキラ、ふわふわ。心地よい。
「あー、やっぱりこの曲いいなぁ」
さっきまで乱れていた心があっという間に穏やかになる。浄化されていく。
音楽につられて目を閉じると、瞼の裏側に明るい世界が広がって見えた。
僕の世界とは、まるで対照的。
しばらくして目を開けると、放置されていたシャープペンを掴んだ。
そして問題集に向き合った。
「ふんふふーん」
メロディーにのって鼻歌が漏れる。
このアーティストにハマったのは、中学二年の頃。親に指定された今の高校に受かるために行きたくもない塾に行かされたりして不満ばかりな毎日だった。
部屋で勉強をしているときラジオから流れてきたこの曲を聴いて僕は、無意識に泣いてしまったんだ。
この歌詞と僕の世界と重なる部分が多くて共感できたんだと思う。
それからの毎日、僕はこのアーティストの曲を聴いて落ち込んだりイライラしたときは心を落ち着かせるようにしている。
そして、この歌詞の中に憧れている部分がある。
〝未完成な僕たちは、自分の言葉で表現するのが下手で失敗ばかり。でも失敗を恐れてばかりでは何もできない。何度失敗したっていい。がむしゃらに走って明日を描く。それが未来への一番の近道だ〟
僕にはできない生き方ですごく羨ましい。
でも、だからこそーー。
「そんなふうに生きられたら、きっと毎日楽しいんだろうなぁ」
そんなことを呟きながら、カーテンが全開になっている窓を見つめた。
十一月の夜空は、澄み切っていて無数の星が浮かんでいて時折キラリと輝いた。
……僕の道標は、一体どれだろう。